矯正治療の種類と違い
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正ってどんな治療?
ワイヤー矯正とは、歯に様々な金属製装置を装着して矯正力をかけ、歯を移動させる矯正法です。
最も歴史が長い矯正方式で、長年の臨床研究から様々な補助装置が開発されています。それゆえ実現できる移動様式(歯の動かし方)も多く、適応範囲も広いです。
ワイヤー矯正のメリット
ワイヤー矯正はマウスピース矯正(後述)と比べて歯を引っ張りだす「挺出」という移動が得意です。そのため、奥歯の挺出が必要な重度の過蓋咬合の矯正が得意です。
矯正治療は、難症例(歯を大きく動かす必要がある症例)であればあるほど「加力した際に意図どおりに歯が動く確率」が下がります。(これはワイヤー矯正でもマウスピースでも同じです。)
ワイヤー矯正は力のかけ具合を柔軟に調整できるため、うまく動かなかった際に即座に軌道修正が可能です。それゆえ難症例を矯正しやすいです。
※決してマウスピース矯正では難症例を改善できないという意味ではありません。
ワイヤー矯正で使う装置は歯に固定されており、マウスピース矯正(後述)のように自分で取り外すことができません。取り外せないことは一見するとデメリットですが、ついつい取り外したままサボってしまう人にとっては好都合です。サボってしまうことによる治療の遅延が起こりません。
ワイヤー矯正のデメリット
ワイヤー矯正はマウスピース矯正(後述)と比べて歯を押し下げる「圧下」が苦手です。ワイヤー矯正では圧下に必要な力を「ワイヤーで」加えますが、その力が固定元となる周囲の歯に分散してしまうためです。
圧下力を補うための補助器具もありますが、それを使ってもマウスピース矯正よりは苦手です。
圧下が苦手なため、奥歯の圧下が必要となる「開咬(前歯が閉じない)」の矯正は苦手です。
見てのとおり目立ちます。そして矯正装置は自由に着脱できません。営業職の方や、モデル・タレント・Youtuberなど人前に出る機会が多い方には不向きです。(マウスピース矯正は透明で目立たず、ここぞというときに取り外すこともできます。)
矯正装置の出っ張りはかなりの違和感です。そして出っ張りは口腔内を傷つけるリスクを常にはらんでいます。飛んできたボールなどがぶつかるとかなりの確率で出血しますので、日常的にスポーツをされる方にはお勧めできません。
後述するマウスピース矯正のマウスピース交換(≒負荷調整)は2週間に一度です。対してワイヤー矯正のワイヤー調整(≒負荷調整)はおおむね1か月に一度です。調整回数が少ないワイヤー矯正でマウスピース矯正と同等の移動を実現するには、その分調整1回あたりの負荷を強くするしかありません。ですから当然痛みは強くなります(逆に痛みを抑えようとすると矯正期間が長くなります)。なにより食事中はかなり痛いです。
矯正器具が邪魔で歯磨きがしづらいです。歯磨きに時間がかかりますし、どれだけ丁寧に歯磨きしても磨き残しは避けられません。それゆえ矯正中に虫歯になったり歯周病になったりするリスクが高めです。
ワイヤー矯正の費用相場
70万円~120万円程度(全顎矯正時)
マウスピース矯正
マウスピース矯正って
どんな治療?
マウスピース矯正とは、着脱可能な透明のマウスピースを使って少しずつ歯を動かし、歯並びを改善する治療です。
矯正装置は透明で目立ちにくく、商談や撮影などここぞというときに自分で取り外すことができます。人前に出る機会が多く、見た目を気にする大人のための矯正治療として注目されています。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正は、傾いた歯を押し込む「傾斜移動」が得意。
マウスピース矯正は傾いた歯を押し込む「傾斜移動」がとても得意です。それゆえワイヤー矯正よりも短期間で矯正できます。(前歯部以外の状態にもよりますが。)
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて歯を押し下げる「圧下」と前歯を押し倒す「傾斜移動」が得意です。そのため、奥歯の圧下と前歯の傾斜移動が必要な「開咬(前歯が閉じない)」の矯正は得意です。
矯正用マウスピースは透明で目立ちません。厚さもわずか0.76mmしかなく、遠目では着けていることがほとんどわかりません。また、商談や撮影・収録など、ここぞというときには自分で取り外すことができます。
ワイヤー矯正において食事は苦行です。かなりの激痛ゆえに矯正医が「硬いものは避けるように」と指導するほどです。しかしマウスピース矯正ならその心配はありません。食事中はマウスピースを外すため痛みはほとんどありません。
また食事中でなくても、矯正負荷による痛みや違和感もワイヤー矯正と比べて少な目です。ワイヤー矯正は1か月に一度しか負荷調整(ワイヤー調整)をおこないませんが、マウスピース矯正は1か月に2度負荷調整(マウスピース交換)をおこないます。調整1回あたりの負荷量が少なくて済むから、痛みも少ないのです。
ワイヤー矯正は運動中に人とぶつかると口腔内が切れたりします。マウスピース矯正ならその心配はありません。
マウスピース矯正は事前にシミュレーションを確認できます。矯正がどのように進み、最終的にどのような歯並びになるのかを確認したうえで契約することができます。(当院では契約前に確認できます。他院では事前に確認できないこともあるかもしれません。)
マウスピースを外してしっかり歯磨きできます。そのためワイヤー矯正と比べて虫歯や歯周病になるリスクが低めです。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて歯を引っ張りだす「挺出」という移動が苦手です。そのため、奥歯の挺出が必要な重度の過蓋咬合の矯正は苦手です。
マウスピース矯正は1日最低22時間程度の装着が必要です。装着時間を守れない場合、治療効果に差が出てしまいます。装置を外せるからこそのデメリットです。
マウスピースを装着しながらの飲食はNGです。装着中は水か無糖の炭酸水しか飲めません。食事中は外し、食事後再装着の前には歯磨きをしなければなりません。
すくなくとも1日1回はマウスピースを掃除しなければなりません。凸凹したマウスピースを掃除するのはけっこう手間です。超音波洗浄機や洗浄剤を使うことで手間を減らすこともできます。
マウスピース矯正の費用相場
前歯矯正:
20万円程度~
全顎矯正:
60万円~100万円程度
当院では、上記の費用相場よりもリーズナブルな価格で治療をおこなっています。詳細は「マウスピース矯正 全顎矯正プラン」のページをご覧ください。
セラミック矯正
セラミック矯正って
どんな治療?
セラミック矯正とは、歯を削って支台歯(土台)とし、その上にセラミックの被せ物をすることにより歯並びを整える矯正方式です。短期間で矯正が可能で、歯の色・形も変えられることが特長ですが、健康な歯を犠牲にしなければならない治療でもあります。患者さん・医師共に、慎重な検討を要する治療です。
セラミック矯正のメリット
セラミック矯正はワイヤー矯正やマウスピース矯正のように歯を動かす治療ではありません。歯を削り、被せ物によって向きを整える治療です。それゆえ治療期間は短く、最短1か月程度で矯正できます。
矯正と同時に歯の色・形も自由に変えられます。天然歯のようなリアルな不揃いさや着色がある歯も作れますし、整然と並んで真っ白な歯を作ることもできます。
[重要]
セラミック矯正のデメリット
治療にあたり歯を削らなくてはいけません。元の歯の角度によっては歯の神経を抜かなければならないこともあります。(このあたりの判断は医師によって異なります。)
過度に傾斜している歯に垂直に被せ物をすることはできません。治療後に折れてしまうことがあるからです。また歯根の移動はできないため、歯列に重度の叢生(そうせい・デコボコ)がある場合は適応になりません。
歯を削ることにより、歯の強度は少なからず低下します。また、神経を抜かなければならないこともあり、歯の寿命が短くなる可能性があります。
また医師の技量によりますが、削った歯と被せ物の間に微妙な段差ができてそこから細菌が侵入し、虫歯や歯周病になるリスクもあります。
セラミック治療は『精密な土台形成技術』と『精密な被せ物の設計・製造技術』の2つがあってはじめて成り立つ治療であり、十分な知識・経験・技術を持った医師でなければ非常にリスクが大きい治療です。しかしその腕を持った歯科医師は極めて稀であることを十分に考慮しなければいけません。
セラミック矯正の費用相場
6本一式費用:
35万円~80万円
マウスピース矯正がお勧め
マウスピース矯正はデメリットが少なくて価格も安い
3つの矯正方式のうち私が最もお勧めするのはマウスピース矯正です。マウスピース矯正は見た目に優れ、痛みも少なく、なんといっても低価格です。まずはマウスピース矯正を第一選択に検討してみることをお勧めします。
マウスピースで
どうして歯が動くの?
矯正用マウスピースの厚みはわずか0.76mm。爪楊枝の先ほどの厚さしかないマウスピースで、どうして矯正できるのでしょうか?次のページでは、マウスピース矯正の原理について詳しく解説していきます。