精密根管治療について
(保険治療との違い・治療の流れ・費用)
根管治療とは?
根管治療とは、歯の神経(根っこの内部)まで到達した虫歯病巣・歯髄組織を除去・滅菌し、新しい被せ物(クラウン)で封じる治療です。歯科の治療の中で最も長引く治療の一つです。
はじめて“神経を抜く”治療を指して「抜髄治療」と呼んだり、“細菌に感染した根管内の治療”であることから「感染根管治療」と呼ぶこともありますが、やることは同じです。基本的には以下の流れで治療します。
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1歯冠部の虫歯除去
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2汚染歯髄の除去
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3根管内の洗浄・消毒
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4被せ物で密封
保険治療の成功率は30~50%
残念ながら日本における保険根管治療の成功率は低く、50~70%の症例において虫歯が再発し、再治療となることがわかっています。
なぜ保険治療の成功率は低いのか?
成功率が低い理由は、滅菌しきれていないから
虫歯の発生原因は細菌感染です。そして再発の直接的な原因もまた、細菌感染です。つまり保険治療において成功率が低い(=再発・再治療率が高い)理由とは、結局のところ“患部を滅菌しきれていない”ことに尽きるわけです。
根管治療は“歯の神経を抜く治療”と簡単に言われますが、しっかり処置をしないと歯の中で細菌が再び増殖してしまいます。実はとても難しい治療なのです。
歯医者の腕が悪い?!
どうして根管治療の成功率は低いのか?!
日本における保険根管治療の成功率はわずか30~50%。どうしてこれほど成功率が低いのか、その根本原因は、実は“低すぎる診療報酬”にあると私は考えています。
歯医者にとって根管治療は“原価割れする赤字商品”という厳しい現実…。
根管治療で歯医者がもらえる診療報酬、その額たったの7,000円(症状によります)。この額は、アメリカの約1/10~20、アジア諸国の1/7程度です。
実は根管治療は歯医者にとって最大の赤字・不採算部門。頻繁に生じる症例でありながら、これでは国に『根管治療にコストをかけず、症状が悪化したら抜歯対応で済ませなさい』と言われているようなものなのです。
赤字商品だから、誰もコストをかけようとしない。技術を磨こうともしない(当然だ!)
当然ながら、収益的に厳しい根管治療に専門的な機器・資材は使えませんし、時間をかけて処置することもできません。やればやるほど赤字になるから、町の歯医者さんが(たとえ歯を温存できる症例であっても)「抜歯ですね」と患者さんに言ってしまうのは、仕方がないことのようにすら思えてしまいます…。
真面目に根管治療を学び実践するほど経営は悪化する。だから誰も技術を磨かない。おかしな診療報酬制度が、成功率が下がる負のスパイラルを生んでいると、私は思うのです。
どうすれば成功率は上がるのか?
再発の原因が細菌なら、
滅菌を徹底すれば成功率は上がる
- 1. 術中の細菌侵入を防ぐ
- 2. 根管内の殺菌を徹底する
- 3. 治療後の細菌侵入を防ぐ
再発の原因は細菌にあります。ならば理論上やるべきことは明らかです。
まず、術中(穴が開いて)無防備に晒される根管内に唾液(=細菌)が侵入することを防ぎます。そして、根管内の殺菌を可能な限り徹底します。そして治療後に細菌侵入を防ぎます。
このような滅菌の徹底が、根管治療の成功率向上には不可欠です。
当院の精密根管治療とは?
当院は精密根管治療を自費でおこなっています。保険治療との相違点を以下に説明します。
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工夫1CTを使用し、
根管構造・病巣の広がりを
正確に把握する -
工夫2ラバーダムを使用し、
術中の細菌侵入を防ぐ -
工夫3マイクロスコープを使い
病巣細部を確認しながら処置する -
工夫4ニッケルチタンファイルを使い
病巣を丁寧に取り除く -
工夫5根管抹消部をレーザーで殺菌する
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工夫6根充剤に専用シーラーを塗布し
根管内の細菌増殖を防ぐ -
工夫7高精度セラミッククラウンで
残歯を密閉閉鎖する
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工夫1CTを使用し、根管構造・病巣の広がりを正確に把握する
根管内(歯の根っこの内部)は入り組んでおり、しかもまっすぐではなく曲がりくねっています。もちろん人によって、歯によっても違います。これらはレントゲン画像のみでは正確にはわかりません。正確にわからなければ、精密な処置もおこなえません。
そこで治療前にCT撮影をおこない、根管の構造と病巣の広がりを正確に把握します。その上で処置の具体的な方法を検討します。
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工夫2ラバーダムを使い、術中の細菌侵入を防ぐ
ラバーダムとはゴム製のシートで、根管治療の術中に患部周囲を覆うための道具です。術中は根管内が無防備に晒されるため、細菌を含む唾液が流れ込むリスクがあります。ラバーダムを使って患部以外を覆うことで、術中の細菌侵入を防ぎます。
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工夫3マイクロスコープを使い、病巣細部を確認しながら処置する
マイクロスコープとは肉眼の約20倍まで視野を拡大できる歯科用顕微鏡です。
保険治療では肉眼下で処置がおこなわれますが、肉眼では細かな病巣を削り逃すことも多く、そこから虫歯が再発してしまいます。
病巣の削り残しを極限までなくせるよう、マイクロスコープで病巣細部を確認しながら処置を進めていきます。
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工夫4ニッケルチタンファイルを使い病巣を丁寧に取り除く
「ファイル」とは、歯の根っこ内部の病巣を削り取るために使う特殊な清掃器具です。ファイルはいくつかの種類がありますが、当院では「ニッケルチタンファイル」という柔軟性が高いファイルを使います。
ニッケルチタンファイルは、保険治療で使用するステンレス製ファイルと比べるととても柔らかくてよくしなります。そのため、根管内が曲がりくねった形状でも、綺麗に根管を拡大、病巣を除去できます。
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工夫5根管抹消部をレーザーで殺菌する
ニッケルチタンファイルとて無敵ではありません。ファイルが届かない「歯根から分岐した細い枝(側枝といいます)」内部の病巣や、歯牙内部に入り込んだ微細な細菌までは除去できないのです。再発リスクを極限まで抑えるためには、こうしたファイルが届かない部分の細菌をなんとかしなければいけません。
そこで活躍するのがレーザー装置です。レーザーを歯根内部に照射し、細い枝や歯牙内部を殺菌し、可能な限り滅菌します。
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工夫6根充剤に専用シーラーを塗布し、根管内の細菌増殖を防ぐ
根管内を清掃・洗浄したのちに、ぽっかり空いた根管内を埋めるため、根充剤というものを詰めます。その根充剤と根管壁に生じるわずかな隙間を埋めるために塗布するのが「シーラー」です。
当院の精密根管治療では、封鎖性・強度・抗菌性が特に優れたシーラーを使い、根管内への細菌侵入・細菌増殖をできる限り低減しています。
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工夫7高精度セラミッククラウンで残歯を密閉封鎖する
ここまで紹介してきたのは、術中に細菌侵入を防ぎ、術中に極限まで滅菌するための工夫でした。これから紹介するのは、術後の細菌感染を防ぐための工夫です。
自費治療であれ保険治療であれ、根管治療の最後は“被せ物(クラウン)の装着”です。実はこの被せ物の精度は治療の成否に大きな影響を与えます。
1. 残歯表面に土台を隙間なく密着させる
病巣除去の過程で、歯冠部(歯の見えている部分)は多くの部分を削り取ります。その削り取った表面(つまり根充剤の上)に土台を着け、さらにその上に被せ物を着けるわけですが、その土台と残歯の接続面に隙間があると、その隙間から細菌が侵入・増殖してしまいます。ですから接続面はできる限り隙間ができないようにしなければいけません。
そこで当院では残歯の形状をしっかり型取りしたうえでぴったりはまる土台を作り、残歯と土台の隙間ができないようにしています。
2. 被せ物と残歯の側面段差をなくす
被せ物と残歯(根っこ)部分の接合部側面に生じがちな段差も虫歯リスクになります。段差部分に食べかすが詰まったり、段差のおかげで歯周ポケット内をブラッシングできなくなり、そこから細菌が増殖してしまうのです。
当院では、被せ物と残歯の側面段差を極限までなくせるよう、ぴったり合う形状のセラミックの被せ物を作っています。
精密根管治療の流れ
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1精密検査
レントゲン撮影、CT撮影などのいくつかの検査をおこないます。根管構造を正確に把握し、治療計画を立てます。
2治療プラン説明
どのような治療をおこなうか、何回くらいの通院が必要になりそうかなど、治療プランを詳しく説明します。
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ご契約後、治療開始
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1麻酔
治療前に注射麻酔をかけます。麻酔注射の前に麻酔クリームで歯茎表面を麻酔し、注射の痛みも軽減します。
2ラバーダムで歯を隔離する
ラバーダムで患部以外の歯を覆い、唾液の侵入を防ぎます。
3歯冠部の病巣除去
歯冠部(歯の歯茎より上の部分)の虫歯を削っていきます。
4根管内のファイル清掃
ニッケルチタンファイルで根管内の汚染歯髄を除去します。
5レーザー殺菌
根管内にYAGレーザーを照射し、ファイルが届かない根管の細い枝(側枝)や歯牙内部を殺菌し、可能な限り滅菌します。
6根管内洗浄
根管内を消毒液で洗浄して殺菌します。
7仮封
洗浄・殺菌後、抗菌薬で根管内を満たして蓋をします。
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約1週間後
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患部を確認して問題なければ根管内に詰め物をします(根管充填といいます)。
1蓋を取って根管内部を確認する
前回処置の最後に着けた蓋を取ります。根管内部を確認し、膿や炎症がないことを確認します。(もし炎症が続いている場合は前ステップの4~7の工程を繰り返します。)
2根管充填
根管内に膿や炎症がみられなければ、根管内に“根充剤”というゴム状の詰め物をして密閉します。
3仮封
患部に蓋をして閉じます。
4レントゲン検査
レントゲン撮影をおこない、根充剤がしっかり根の先まで詰まっているか確認します。(しっかり詰まっていなければ処置をやり直します。)
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約1週間後
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1土台づくりのための型取り
被せ物の土台(“コア”といいます)をつくるため、型取りをします。シリコンまたはアルジネートという粘土のようなものを押し当てて型を取ります。
2仮封
患部に蓋をして閉じます。
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約1週間後
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1土台の設置
できあがった土台を歯に設置します。
2土台状態の型取り
土台を設置した状態で型取りをします。
型取りが終わったら、仮の被せ物をはめてこの日の処置は終わりです。
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約1週間後
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できあがった被せ物を土台の上に設置して、治療は終了です。
精密根管治療の費用
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231,000円~459,000円です。以下❶❷❸の合計金額で決まります。
- ❶初診料(検査・診察)
- 3,000円程度(保険診療)
- ❷精密根管治療の本体料金
- 前歯:148,000円
- 小臼歯:178,000円
- 大臼歯:198,000円
- ❸被せ物・土台(コア)費用
- 選ぶ素材によって変動。80,000円~258,000円
治療費=❶+❷+❸定価総額:
231,000円~459,000円月額:6,700円~
※初診料はローンでお支払いできませんモニター価格のご案内
当院では、症例情報の外部公開や、サービス改善のための詳細なアンケート等にご協力いただける治療モニターを募集しています。モニター価格は以下のとおりです。
- ❶初診料(検査・診察)
- 3,000円程度(保険診療)
- ❷精密根管治療の本体料金
- 前歯:58,000円 (90,000円OFF)
- 小臼歯:68,000円 (110,000円OFF)
- 大臼歯:78,000円 (120,000円OFF)
- ❸被せ物・土台(コア)費用
- 選ぶ素材によって変動。80,000円~258,000円
治療費=❶+❷+❸モニター総額:
141,000円~339,000円月額:3,800円~
※初診料はローンでお支払いできませんモニター希望の方は、フォームよりお申込み時に「精密根管治療(モニター)」を選択してご予約ください。なお、モニター条件等はクリニック来院時にお問い合わせください。
治療時・術後の痛み
麻酔を施してから治療しますので、処置中に痛みはほぼありません。術後はズキズキした痛みが出ることがありますが、通常3日程度でほとんどなくなります。
当院の保証期間・保証内容
被せ物の保証について
被せ物は1年未満であれば破損時に無料で再治療します。1年以上3年未満の場合は11,000円にて再治療します。3年以上は被せ物代金を全額負担となります。
虫歯の再発時の保証について
どれだけ精密な治療をおこなっても再発を100%防ぐことはできません。そこで当院では、万が一の再発時もしっかり保証します。
治療終了後5年間は無料で再治療します(被せ物代金は前述のとおりです)。また、再感染により抜歯・インプラント治療が必要となった場合、インプラント治療を98,000円引きでご提供します。
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※各保証は当院の指定した定期検診を受診されて、再度の処置時に全身状態の良好な方が保証の対象となります。また、根っこが割れていたり周りの骨がなくなっている場合には保証の対象外となります。
以下のお悩み・症状がある方は、すぐに受診してください
当院では、他院診療中の患者さんのセカンドオピニオンをおこなっています。
以下のお悩みがある方はお気兼ねなく当院にご相談ください。
こんなお悩みありませんか?
- 他院で根っこの治療をしているが、なかなか治らない。
- 根っこに膿の袋があると診断された。抜歯が必要と言われたが、できれば抜歯したくない。
「もしかしたら私、根っこが死んでるかも…」
以下の症状が見られる方も、早めに受診してください。
- 虫歯を放置しすぎて歯冠部に大きな穴が開いている。
- 普段は痛みがないが、疲れているときや体調が悪いとき、歯の付け根にうずき・鈍痛が起こる。
- 歯茎に丸い腫れができたり潰れたりしている。
- 歯茎に小さな穴があり、膿が出てくる。